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1 好敵手たち──水野エリカ──を中谷は自分の戦跡で証明している。ただ、いざというときのために懐に刀を忍ばせるスタイルも会得しておく必要は絶対あると私は思う。それが中谷には欠けていると思っていた。それが失敗だった。私は紺野との公式戦で引き分けに終わり、後の試合を堅実に勝って、紺野とも戦跡ではイーブンの状態でシリーズをこなしていった。その後を中谷がぴったりマークするように追っている。シリーズ最終戦の前日に紺野は公式戦を終え、戦績でも文句無く最終戦の優勝決定戦に進出していた。私はその日は公式戦が組まれてなかったので、星取表の勝ち数では紺野に一戦分低い二位の状態だったが、ファンにもマスコミにも、最終戦でしっかり紺野と並んだ上で優勝決定戦に進出するだろうと思われていた。ファンの優勝予想は紺野と私とではほぼ半々だ。最終戦にも公式戦が組まれて優勝決定戦とあわせたら一日二試合になる私が不利だという意見と、逆に優勝決定戦の前に一試合する事で体が温まっているだろうという意見が、半分に割れた理由だった。私は、私を優勝予想しているファンの考えどおりに最終戦を終らせたかったのだが、その最終戦、優勝決定戦の前に戦う相手が中谷だから、油断したら体が温まるどころの騒ぎではなくなるな、と気を引き締めていた。 中谷と私の試合がおわった。試合終了直後の私は何も覚えていない。ただ解った事は、私が中谷の腕ひしぎ逆十字固めにギヴアップした“らしい”ということ。その証拠に中谷の手はレフェリーによって揚げられている。私は朦朧とした意識の中で中谷と私の星取の得点を計算した。 同率二位。 |
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