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1 好敵手たち──水野エリカ──

 そうか、あくまで紺野優勝というシナリオか。そうまでして私には主役は張らせたくないというのか。だったら、紺野には恨みは無いけど……あんたに決勝には絶対行かせない。行けたとしても優勝だけはさせてたまるか!

 紺野は自分が会社に優遇されている事には全く気付いてはいない。いや、気付かない方がいいかもしれない。紺野自身、根はすごくいいヤツなので、自分が格上で私が格下と扱われている事を知ったら良心が痛むだろう。そうしたら、彼女の持ち味であるアマレスを基本としたパワーあふれる試合は出来なくなる。逆に嫉妬している自分が恥ずかしい部分もあった。

 私は日程表とにらめっこして、何とか自分が紺野より上に上がれるようにと研究しようとした。そこで解った事は、私の他にも体制に潰されようとしている選手の存在だ。しかも、私よりも過酷なスケジュールだ。
 その選手の名は中谷園子。デビュー間も無いが、少なくとも今の彼女と同じくらいのキャリアの頃の私や紺野よりも遥かに実力は上だ。認めたくは無いが、今の私や紺野よりも上をいってる部分もある。今の中谷の実力にプラスして今の私や紺野と同じくらいの試合勘、つまり“場慣れ”があったら確実に負けてしまうだろう。

 初戦で紺野とやって、最終戦で私。しかも公式戦が組まれて無い日は全てシングルマッチ。公式戦が無い日は全て、ある意味ラクの出来るタッグマッチばかりの紺野とはえらい違いだ。中谷も災難だな……。
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