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20R ニューホープ後編ートだ。私はあえて、痛め技とか繋ぎ技という発想を捨てて、並の相手ならこれで勝負が決まってもおかしくないほどの勢いで攻め続けた。いつもの中谷さんは相手の技を受ける事で相手の強さを引き出しているつもりだろうが、今は逆に、怒涛の攻めにより私が中谷さんの受けの強さを引き出す。それで仮に中谷さんが負けてしまうような事があったとしても構わない。この試合が名勝負になるか世紀の凡戦になるかは、ここを中谷さんが耐え切れるかどうかにかかっているんだ。 10分経過のアナウンスが流れた。私は普段フィニッシュに使うような技を連発していたので、既に数試合を立て続けに強行したのと同じくらいスタミナを疲労していた。が、これで終わってしまったら本当にただの凡戦だ。 私は倒れている中谷さんを無理矢理立たせながら、その耳元で 「今度は中谷さんの番ですよ」 と小声で呟くように言った。そう、普段は中谷さんが相手である私をリードしていたものだけど、この試合に限っては私が引っ張る積もりだった。 中谷さんが立ち上がり、私と組み合った次の瞬間、中谷さんの体が沈んだ。と思ったら私の体が宙に舞う。巴投げだ。そして、そのままの流れで、私の腕を掴んで、その腕ごと私の首を両足で締め上げて三角締めの体勢に入った。私は体勢を入れ替えると、中谷さんの足で首を締め上げられつつも立ち上がる。中谷さんの体が逆さ釣りのようになったところで、力任せにパワーボムのように中谷さんの体をマットに叩きつけ、技を強引に振りほどいた。パワーボムは大技だから本当は若手の私が使ってはいけ |
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