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20R ニューホープ後編ない技だけど、この場合は相手の技を振りほどくのが目的だから構わないだろう。ダメだったとしてもこの世界はあくまで「やったもん勝ち」だ。そして中谷さんを立たせながら「まだまだ」と声を掛ける。 中谷さんが払い腰で私を投げる。この技からも腕ひしぎは出せる。私は例によって両腕をがっちりと組んで腕を伸ばされるのを阻止した。さらに裏返されて腹固めをされないように注意を払う。もちろん私がデビュー戦で涙を飲んだ腕がらみに対しても警戒した。中谷さん、ここからどう攻める? 中谷さんは組んでいる私の腕の中に自分の腕を差し込んだ。そしてその腕に自分の足を絡ませ、私の腕を曲げた状態のまま締め上げた。巴投げ、三角締め、払い腰と柔道殺法が連続したところで、純プロレス技であるキーロックだ。足を絡まされているため、私の腕は伸ばすことは出来ない。それどころか足の力でもって、私の肘をさらに折り曲げようとしている。ところがその肘の間には中谷さんの腕が錠前の如く差し込まれている。無理矢理腕を曲げさせられようとしているところに中谷さんの腕があるのだから、私の腕の血管は圧迫され、血流が止まったように感じた。実際、私の手の平は、さっきまで赤く高潮していたのに、血が通ってないのか白くなってきた。自由になっている手で締め上げられてる腕を試しにつねってみたが、痛みどころか何の感覚も無い。私はロープに足を伸ばした。ブレークになったところで、私は思わず浮かんだ笑みを隠せなかった。このキーロックは私の腕を麻痺させて、今後の展開に有利に持っていこうという作戦だろう。つまり、あの中谷さんが“繋ぎ技を出した”のだ。だけど、私の腕を機能停止にするにはあまりにロープが近すぎた。すぐブレークとなったおかげで、私の腕は完全麻痺とはならなかったのだ。私は本当は既に感覚は戻っているのだけど、わざと腕をパンパン叩いたりグルグル回したりして、必死に腕の感覚を取り戻そうとしているかのように振舞った。 中谷さんが私を立たせてロープに振る。私はキーロックされた腕から力を抜いてブラブラさせたままロ |
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