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20R ニューホープ後編側入場口を見据える。『赤コーナー、中谷園子選手の入場です!』 中谷さんが出てきて私と目が合った。中谷さんも私を睨みつけてくる。漫画的に表現すると、火花が散っている状況だろう。私と中谷さんの視線が交差するところに紙切れでも置こうものなら燃え出すのではないかと本気で思った程だ。 レフェリーに、中谷さんがリングインするから青コーナーに行けと言われて、私はコーナーから降り所定の位置に戻った。 選手紹介が終わり、リング中央でレフェリーによるボディチェック。そして、決勝戦だからお互いフェアに試合するようにとレフェリーが声を掛ける間も私と中谷さんは視線を全くそらさず、お互いの顔を睨み続けていた。 レフェリーが握手するように私と中谷さんを促す。手を出そうとしたその瞬間、私の目から星が飛んだ。中谷さんがいきなり私の顔を張ったのだ。思わぬ不意打ちに体勢が崩れたところに、中谷さんの猛ラッシュが続く。ゴングが鳴る前に攻撃されるとは思って無かっただけに、防戦一方になってしまった。 レフェリーが慌てて試合開始のゴングを本部席に要請した時には、私はロープ際に追い詰められていた。 「中谷! ロープだ、やめろ! ブレークしろ!」 レフェリーに言われて中谷さんが攻撃の手を止める。が、ホッとして一瞬気が抜けたところに、追い討ちの張り手を喰らってしまった。 「中谷! ブレークだと言ってるだろう!」 |
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