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20R ニューホープ後編

「向こうのスケジュール消化して、しばらくは海外観光でもしようかなと思ったんだけどさ、なんとなく今年のニューホープの決勝を見たくて飛んで帰って来たんだよ。水野も一緒だよ。あいつはいま中谷の所に行ってる」
「そうですか……」
「それに、このシリーズが終わって次期シリーズまでのオフの間にジャパンレディースとの対抗戦があるだろ。それも見たいしね。あと、このオフの間にはもう一つ、お前と中谷の海外修行壮行試合が会社ではなく選手会自主興行であるから、それに顔見せしたいし」
 紺野さんはそう言った後で、対抗戦は既にカードとかも内部では決まってるだろうから無理としても、選手会自主興行の方では出来れば試合したいと続けた。
「私や水野が海外に出発した時点でお前はまだ練習生だっただろ。だからレスラーとしてのお前の事、全く知らない訳だけど、それだけにどんな試合するのか楽しみだね。期待していいよな?」
「はい! レスラー山神愛を思いっきり見せ付けますから、しっかり見届けて下さい!」
 私は力強く答えた。紺野さんは満足そうに頷くと、私の肩を軽く叩き、小さく「頑張れよ」と言った。


 セミファイナルが終わった。私は控室を出て、入場口(ホールの入り口)に立った。
『青コーナー、山神愛選手の入場です!』
 アナウンスが終わるのを待たずに、私はドアを開けてリングへと全力疾走した。私の入場テーマのバナナラマのビーナスのイントロが終わる前に私はリングインする。そして、自分のコーナーの青コーナーではなく、赤コーナーのコーナーポストに駆け上がり、後から入場してくる中谷さんが出てくる赤コーナー
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