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20R ニューホープ後編

やる。今の私に出来る限りの精一杯のプロレスを、お客さん・テレビで見ている全国のファン・雑誌、新聞、テレビ等のマスコミ・そして同じ女子プロレスを生業としているレスラー達全てに見せ付けてやるんだ。


 試合がどんどん進んでいく。そんな中で、中山先輩が、大技を出してくる中堅の先輩相手に前座の技だけで対抗し勝利したが、私は別に驚きもしなかった。この試合で中山先輩はラフな攻撃もしなければセメント・シュートも仕掛けなかった。にも関わらず勝利した。既に中山先輩は前座で燻っているようなレベルの選手ではない。その事を私は実際に戦った事で確信していた。
 さらに試合が進む。私は次第に自分の出番が待ち遠しくなって来た。早くリングに上がって戦いたい、そういう思いが私の体に充満していくのを感じた。
 その時、私は自分の体が震えているのに気付いた。恐いとか緊張とかそういうのではない。早く試合したい思いが強くなれば強くなるほど体の震えも強くなっていく。私自身は高揚しているのに体が震えるなんて生まれて初めての経験だ。これがいわゆる武者震いだろうか。

「おう、山神。試合はこれからだっていうのに、もう気合入りまくりだね」
 不意に声をかけられて振り向くと、紺野さんが立っていた。
「こ・紺野さん!? どうして!?」
 去年、ニューホープ決勝を戦って海外武者修行に旅立った紺野さんと水野さんが帰国第一戦を戦うのは次期シリーズのはずだ。
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