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20R ニューホープ後編

た。
「私が中谷さんほどの受けの強さがあったら、その作戦も有効だと思います……。でも、中谷さんの関節技などのテクニックを受けきれる自信はちょっと……」
「確かに中谷の関節技は一度極めればお終いって程の威力があるから、それは注意しないとな。だけど、その点についてもちょっと考えればどうとでもなるよ。リング中央で試合をしない事、だ。何かあったらすぐロープブレーク出来るポジションで試合を進めればいい」
 なるほど。確かに全てにおいて理にかなった作戦ではある。でも……。
「でも、お客さんは、私の力のこもった豪快な動きを期待してると思うんですよ。その作戦だとお客さんの期待を裏切る事になるんじゃないですか?」
「そんな事大丈夫だよ。最後の最後に試合を決めるところで山神ならではの力技を出せばいいことじゃないか。耐えに耐えて、最後にパワーで大逆転。お客さんも満足する事うけあいだよ」
 さすが中山先輩だ。ここぞという所で私というレスラーをアピールする事でお客さんへ与えるインパクトは絶大なものになる。

「ところでどうして先輩は私にこんな事を話してくれるんですか?」
「一人くらい中谷に土をつけなきゃシャクだ、というのが本音だね。今回のニューホープ、中谷は私に一回引き分けただけで、無敗だったじゃないか。まあ、中谷は受けの上手さやテクニックばかりがイメージ的には先行してるけど、一番の強みは力が安定しているって事だと思うんだ。勝てる相手には確実に勝つからね。ムラが無いのはやっぱり強いよ。去年のニューホープで私はそのムラがあったために最下位に泣いたんだから、その事はよく解る」
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