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19R ニューホープ中編

 でも、晶ちゃんの顔見る限り、ハッタリとかじゃなく、明らかに自信たっぷりの表情だったな……。だけど普段から何も考えてない晶ちゃんだから、この自信に根拠なんてあるはずが無いし……。でも……。いやいや……。だけど……。しかし……。
 あ〜、自分でも何がなんだか解らなくなってきた。私はバカだ、もう1+1も解らない。

「愛ちゃん、なに呆けてるの?」
 不意に声を掛けられ振り向くと、次の試合の中谷さんが背後に立っていた。
「あ、中谷さん。もう入場口に来てるんですか?」
「うん。この試合、もしかしたら早く終わりそうな気がしてね」
「……まあ、中山先輩と晶ちゃんですからねぇ……」
「まあね。もしかしたら晶ちゃんが秒殺で勝つんじゃないかと思って」
 へ?
「な・中谷さんまで何言ってるんですか?」
「でも、どっちが勝つにしても凄惨な試合になるかもよ。セメントの予感さえもしてるんだ」
「セ・セメント!? もしそうなったら、晶ちゃん、秒殺どころか瞬殺でやられちゃいますよ!?」
 大きな声を出してしまう私だが、中谷さんはジッと私の目を見たまま静かに
「忘れたの? デビュー前の晶ちゃんのスパーリングパートナーは社長だったんだよ」
 と言った。その言葉に、思わず動きが止まってしまう私。
「……で・でも、晶ちゃんと中山先輩に、セメントするだけの理由というか因縁……」
 ここまで言いかけて、私は言葉を飲んだ。
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