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19R ニューホープ中編

 私は最後の公式戦を勝利で収めたものの、浮かない顔をして退場した。ホールから出て入場口のところで、次の試合を控えている晶ちゃんと鉢合わせになる。
「あ、晶ちゃん。えっと、中山先輩との試合……」
 そう言いかけた私の言葉を遮って、晶ちゃんは満面の笑みを浮かべて
センパイ、海外でも頑張って下さいね
 と言った。
 一瞬晶ちゃんの言っている意味が解らずに呆けてしまう私。

『如月晶選手の入場です』
 アナウンスが流れ、晶ちゃんは
じゃ、センパイ、行ってきまぁす
 とホールに通じるドアを開けてリングへと向かう。ここでようやく私は晶ちゃんの言葉の意味を理解した。
「ちょ・ちょっと、晶ちゃん! 私が海外武者修行に行くには、準優勝以上の成績でないといけないのよ! 三位の私が優勝決定戦に出れるわけ無いじゃないの!」
 花道を歩く晶ちゃんに、私は思わず大声を上げた。晶ちゃんは振り向くとにっこりと微笑む。
 今まで気付かなかったけど、晶ちゃんの笑顔って結構可愛いな……。
 ……と、そうじゃなくって、私が優勝決定戦に進出するためには、中山先輩がこの試合で負けなければいけない。つまり、晶ちゃんが勝たないといけない。
 何考えてるのよ、そんなのどう考えても無理じゃないの。
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