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19R ニューホープ中編

がどれだけ大きく記事として扱われるかは、選手にとってかなり気になるものだ。自分の試合よりも他の選手の試合が大きく扱われていたら、次は自分が大きく紙面を割くんだと気合も入る。しかし、現時点でのNJWP内部の問題ではなく海外武者修行中の選手が大きく扱われていたら、この鬱憤をどこにぶつければいいのか。そう考えたら、確かにこの記事は問題があるのかも知れない。
「自分の試合のレベルの低さ棚に上げて何言ってんのよ! あんたらの試合が情けないから記事が小さいのよ!」
 と沙希さんは選手に対して言ってはいたが、その裏で新聞社に対しては「一生懸命やってるんだから記事を小さくしないで欲しい」と抗議の電話もしていたらしい。このあたりはさすが沙希さん。


 そんなこんなで、いよいよ私と中山先輩との大一番。
 予想はしていたけど、中山先輩の攻めは半端ではなかった。攻めているときの中山先輩の顔は、以前私に対してシュートを仕掛けていた時と同じ、冷酷な表情だ。だけど、攻め方が全く違う。
 以前のシュートマッチは、確かに私に対して潰しに来てはいたけど、ドロップキック、アームブリーカー、ストンピング等々、やっている技自体は正当技だった。ところが今回は、レフェリーの死角を突いての細かい反則、場外マットを剥がして剥き出しの床にボディスラム等のラフファイトになっていたのだ。正当技も前座の若手というキャリアを基準に考えたら標準以上の実力を持っているというのに、その上こういうラフファイトのような“裏技”もやってこられるのだから、受ける方としてはたまらない。他の先輩たちが中山先輩相手に成す術もなく敗れ去っていったのも解るような気がした。
 だけど、私だって負けるわけにはいかない。
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