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18R ニューホープ前編レだ)。ところが、中山先輩の戦い方は、相手を信頼した上で攻め続けているのではない、この結果相 手が怪我しても構わないと開き直っているようにさえも見えた。例えるなら、以前、私に対してシュートを 仕掛けてきたときのような冷酷さが見えた。「“潰し屋”の本領発揮って感じだね……」 という私の呟きに 「こんな戦い方、イヤですぅ」 と、あの晶ちゃんが珍しく嫌悪感を露わにしていた。 「晶ちゃん、中山先輩はファンに潰し屋と呼ばれてるのよ。つまり、そういう戦い方を期待されている訳 なの。プロならそのファンの期待に応えなきゃいけないじゃない。一方的に嫌だと言うのはちょっと違う んじゃないかな」 私はそう言ってから、「私も言うようになったな」と、思わず吹き出した。 おっと、いけない。笑ってる場合じゃないんだ。私と中山先輩の試合はまだなんだから。 私はリング上で戦っている中山先輩に、リングサイドから鋭い視線を投げかけた。 以前の試合のように私は怪我は抱えていない。コンディションはばっちりだ。そう簡単には潰されな い。中谷さんと優勝決定戦するためにも、絶対に中山先輩には“負けない”。 中山先輩は私の視線に気付いたのか、こちらをチラと見て、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。 優勝決定戦に進むための大一番。試合そのものはまだではあるけど、戦いは既に始まっていた。 |
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