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19R ニューホープ中編「このリーグ戦、あたし、一度も勝ててない〜」ニューホープカップシリーズもその日程の約半分が終わった頃、晶ちゃんがこう愚痴ってきた。 っていうか、このリーグ戦どころか、普段から全く勝ててないじゃないの、と思う私。晶ちゃんはデビュー戦で私を相手に勝った? 何の話? 私、全く記憶にない。 「あたし、やっぱりプロレス向いてないかなぁ」 珍しく深刻な顔で言う晶ちゃん。 「なぁに言ってんの? 晶ちゃんのやられっぷりはホント豪快で、見ていてスカッとするお客さんもたくさんいるよ」 と私は答える。全然なぐさめになってない? そんな事ない。プロレスは客を喜ばせる事が第一前提になっている最も特殊な“格闘技”である以上、晶ちゃんのような負け役も必要なのだ。そういう意味では私は実際晶ちゃんの事を羨ましく思うこともある。相手との実力差が微妙な状態の私は、そういう部分でのファンへのインパクトが弱いと感じる事もあるのだ。 でも、私がいくらそう思ってても、やっぱり負けるよりは勝った方が気分がいい。誰だって本音では勝ちたい。だから一応フォローはしておく事にしよう。 「極端な話、しょっちゅう勝ってる中谷さんや中山先輩と、晶ちゃんへのお客さんの印象は近い部分があるよ」 ところが晶ちゃんは、顔を真っ赤にして怒り出した。その怒った理由が、勝てない自分の気持ちが解るのか、と言うのなら私も納得するところだけど(それどころか私もデビュー当初は全く勝てないのを悩んでた時期があるので、晶ちゃんの気持ちは充分解る)、全く別の所を怒ってるので訳が解らなくなってしまう。 |
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