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18R ニューホープ前編つまり、中谷さんは最終戦を見据えた上でやり返してこなかった、という訳だ。「わ・解りました……。今日の試合の落とし前は優勝決定戦で……」 「それはこっちのセリフ。叩かれた仕返ししなきゃいけないから」 中谷さんは笑いながら片目を閉じた。 この日まで無敗だった選手は私と中谷さんと中山先輩の三人だったが、私が一敗した事で無敗グループから脱落、私に勝った中谷さんはもちろん、中山先輩も堅実に勝ちを収め、順位は逆転した。 この一敗を最後までキープ出来たら優勝決定戦に残るチャンスはまだある。逆に言うと、もう絶対に負けられない。だけど中山先輩との試合もまだ残っている。中山先輩との試合の結果がどうなるか。それが、私が優勝決定戦に残れるかどうかの重要な分岐点となるのは確実だ。 その中山先輩の戦い方がシリーズを重ねるにつれて徐々に変わっていることに気付いたのは、次の日の試合だった。 この日の試合で、中山先輩は相手をコーナーマットに逆さ吊りにしたまま攻撃していたのだ。明らかにラフな展開が増えている。お互い技を受け合い、掛け合うという、信頼関係結ばれた試合とは対極に位置するような戦い方だ。相手の技を頑なに拒否し、一方的に攻める。確かに私も中谷さんとの公式戦で、最後まで一方的に攻め続けてはいたが、それは中谷さんが相手だから出来たようなものだ。その試合で中谷さんが負けるような事があったとしても、大怪我は絶対にしない、それだけの受け身の上手さがある、そう信頼していたからこそ攻め続けれたのだ。もっとも、大怪我はもちろん、たいしたダメージさえも与える事が出来なかったほど打たれ強かったというのは計算外だったけど(私の敗因はずばりコ |
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