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17R ベルト流出選手がいた。おそらくこの椅子で殴られたんだろう。思わずカッとなった私は、間髪入れず、その選手 の側頭部を狙って、胸への打撃並の力を込めてキックを打ち込んだ。中谷さんを見ると、ジャパンレディースの選手の一人に腕ひしぎ逆十字固めをやっていた。さすがの 中谷さんも、こういう事態になったら傍観者を決め込むわけにはいかないようだ。しかし、寝技をやって いるという事は、他の人から見たら攻撃する絶好のチャンス。ジャパンレディース勢数人に取り囲まれ て袋叩きにあってしまう。 「な・中谷さん!」 叫ぶ私の後ろから 「なにやってんだ、敵はまだいるぞ」 の声。振り向くと、今日は試合に出ていない中山先輩だった。道場破りの腕を折って病院送りにした 事も今ではマスコミを通じてファンに知らされている。その上、実際の試合でも私を欠場に追い込んだと いう前科がある。いつしかファンは中山先輩のことを『潰し屋』とあだ名していた。そんな中山先輩だか らこそ、こういう展開はまさに大好物だ。普段試合で見る時以上に活き活きとしている。 普通、こういうセコンド同士の乱闘というのは、抗争劇を盛り上げる要素の一つとして、最初から打ち 合わせてある場合が多い。しかし、いま現実に起こっている乱闘は、何の申し合わせも無い、本当の喧 嘩だった。 今日の興行はNJWPが主催という事で、メインレフェリーもNJWPのレフェリーだ。ただ、サブレフェリー としてジャパンレディースのレフェリーもリングサイドで試合に立ち会っていた。 「いい加減にしろ! セコンド全員退場処分にするぞ!」 |
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