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17R ベルト流出

る。
「レフェリー、ちゃんとチェックして! グーで殴ってる!」
 私は思わず大声を上げると、中谷さんも思い出したように
「ちゃんと見てよ、このクソレフェリー!」
 と叫んだ。私の場合は、思わず夢中で叫んだのだけど、中谷さんは“対抗戦の緊張感”を演出するた めに叫んだのは明らか。全く興奮する事無く、冷静に戦況を見つめている。もっとも今の私にはそんな 事に気付く余裕は全く無かったけど。
 長谷川さんが沙希さんの足を極める。沙希さんはロープを掴む。プロレスではファイブカウント内の反 則はお咎め無しなので、ジャパンレディース側のセコンドが
「長谷川さん、まだいい、放さないで!」
 と叫ぶが、負けじと私を始めとするNJWPのセコンドが
「レフェリー、ちゃんとカウント取れ! ブレイクさせろ!」
 と叫ぶ。
 中々技を解かない長谷川さんに業を煮やしたのか、先輩の一人が沙希さんの掴んだロープのそばま で駆け寄ってレフェリーに抗議しようとしたが、そこはジャパンレディース側の陣営だった。両者のセコン ド同士口論しあい、挙句の果てには殴りあいの喧嘩にまで発展する。止めようとした私も、気付いたら 乱闘に巻き込まれていた。
 メインイベントという、最後の最後で戦争勃発という感じだ。
「痛ッ!」
 背中の激痛に思わず私は声を上げる。そして振り返ると、パイプ椅子を持ったジャパンレディースの
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