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17R ベルト流出試合展開が、次第に立ち技も含まれてきた。例えるなら、普段私や中谷さんもやっている“前座プロレ ス”だ。大技無し。一発張られたら二発張り返すといった気迫の戦い。客席から歓声が聞こえ始めてき た。と思ったら耳を劈くほどの大歓声がリングを包み込む。やっている事は普段の私ら前座の試合と大 差ないのだけど、歓声を比べられたら明らかに私ら前座組の完敗だ。確かに普段大技を惜しみなく使 っている沙希さんや長谷川さんが、普段とは違うものを見せた、というのもこの大歓声の要因の一つだ ろう。でも、観客の熱狂度はそういった要因を差し引いても余りあるほどのものだった。20分経過のアナウンスが流れた。現在20分が経過したという事は、それ以前に10分経過のアナウン スもあったはずなのに、全く気付かなかった。 と、思ったら 「時間経過のアナウンス、忘れてたでしょ」 「スミマセン、思わず試合に見入ってました」 という会話が本部席のほうから聞こえてきて、思わずコケそうになる私。でも、リングアナウンサーが その“職務”を忘れるほどの試合なんてそうそう無い。それほどのものをリング上の二人は見せている んだ、と再認識した。 というのも、最近の、例えば60分フルタイムドローの試合などを見ても、実質にはそんなに長時間戦っ てなどいない。技を出したら息を整え、技を出したら息を整え、という感じで60分持たせている場合がほ とんどだからだ。酷いのになったら、試合時間は確かに60分でも、実質的には半分の30分さえも戦って いない、という場合すらある。 ところが、リング上の二人は息を整えるなんて事はしないで、全く休み無しに動き続けている。にも関 わらず、沙希さんも長谷川さんも、表情を見る限りスタミナを疲労しているようには見えない。 |
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