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16R 不慮の勝利

つけた試合コスチュームの水着は、前座を卒業した後に着るものと基本的には一緒のものだったりする。で、中谷さんは柔道着……?
「それで試合するんですか? 確かに中谷さんは柔道出身だけど、襟とかあるコスチュームは掴まれたりしたらプロレスというルールでは不利なんじゃないでしょうか」
 それとも、そのくらいハンデを与えてもいいとか思ってるのかな……?
「入場する時のコスチュームだよ。試合する時には脱ぐから」
 中谷さんはそう言うと、笑いながら柔道着の前を広げた。
「……トップレスで……、試合するんですか……?」
 中谷さんが広げた柔道着の下には、素肌しかなかった。小振りなおっぱいがプルンッと飛び出す。
「……へ?」
 中谷さんはそう言いながら自分の胸を見た。若干の沈黙の後、
「着るの忘れてた!! しかも胴着の下はノーパンの上に穿いてる!!」
 と叫ぶと、慌てて控室に戻っていった。
 ドアの隙間からリングを覗くと、既に中谷さんの試合相手は入場していた。
『赤コーナーより、中谷園子選手の入場です!』
 リングアナウンサーの言葉の後に、中谷さんの入場テーマミュージックが会場に流れる。
 しかし中谷さんは着替えに戻ったので、当然ながら中々顔を出さない。次第に客席がざわめきだした。

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