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16R 不慮の勝利

出かかったことだろう。出る選手・出れない選手の意識と、最初からやる気の無い選手の意識の温度差。やるせない思いを私は試合当日まで引きずっていた。この時点で既に一つ狂っていた。

 NJWPとジャパンレディースの全面対抗戦第一弾・横浜アリーナ大会は超満員札止めとなった。
 私は横浜アリーナとか日本武道館とか、それなりに大きな会場での試合も経験している。しかし、プロレス興行というものは、最初から満員という事は滅多に無い。私が試合をする前座の時点では空席もチラホラ見えてたりするのだ。前座が終わって休憩をはさみ、後半戦になったあたりでようやく札止め。こういうパターンが結構多い。
 ところが今日は、第一試合が始まる前に客席はほとんど埋まっていた。これだけの大観衆を前にすると、思い切り緊張してしまう。もっとも、ベテランの歌手なんかでも、大観衆に足がすくむという話を聞いた事があるので、私が緊張するのも当然といえば当然かも知れない。
 また、この大会の模様は、CS放送のPPV(ペイ・パー・ビュー)で第一試合から生中継され、更には、全試合を収録したビデオとDVDの発売も決定している。今更テレビに出る事に緊張なんてしていられないけど、ビデオとかDVDとかになったら話は別だ。そりゃまあ普段の中継番組でも、視聴者の中にはビデオに録画して保存している人も少なからずいるだろう。でも、そういう人以外は、基本的には一回見たらそれでおしまい、だ。ところがビデオ・DVD発売、という事は、それを買った人は、いつでも好きな時に何度でも見れるという事だ。つまり、私の試合も何度も何度も見られるわけだ。それも何千人もの人に。

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