もどる

15R 対抗戦前夜

「本気でやろうって言うんだね!? どうなっても知らないよ!」

『やかましい! こっちはいつだっていいワケよ!』

 沙希さんはその日急遽呼び出された林さんに目配せすると
「あんた、どっかあいてる会場ある!?」
 と電話と変わらぬ口調で叫ぶように言った。林さんは慌てて鞄からシステム手帳を取り出しパラパラとページをめくる(実はこれも最初から打ち合わせていたことだけど、記者はもちろん選手もだれも知らなかった)。
「あ、え、と、その、○月○日に横浜アリーナがあいてますけど……」
 沙希さんは林さんの返事を聞くと
「今すぐ押さえて!」
 と叫んだ。
「え? 今すぐ……ですか?」
「もう、じれったい! 今すぐ横浜アリーナに電話して、その日を押さえるの! 早く!」
「は・はい!」
 林さんが慌てた表情で携帯を取り出した。
 沙希さんは向き直ると、携帯を持ち直して
「聞こえた!? ○月○日、横浜アリーナ! その日までせいぜい練習しておくことね!」
前ページ
次ページ