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15R 対抗戦前夜

 私と中谷さんが雑誌を眺めながら話してる間、沙希さんは黙々と携帯でメールしていた。そして返信されてきた内容を読むと、ニヤリと笑みを浮かべ、携帯を閉じた。


「林ちゃん、○月○日、どこか都内で会場あいてるか調べて」
 その日の興行が終了して、宿舎のホテルに着いたところで、沙希さんが会社に電話した。営業の林さんはパソコンで色々検索をかける。
『都内じゃないですけど、横浜アリーナがあいてますけど……、何かするんですか?』
「決まってるでしょ、ジャパンレディースとの対抗戦よ」
『対抗戦!? こういうのは会社同士の話し合いで、いくらなんでも沙希さんが独断で決めるわけには!』
「今日、愛ちゃんが雑誌のジャパンレディースの記事を一生懸命見てたからね。選手には対抗戦する事さえもまだ話してないのに、いざ決まった時のために真剣に相手を研究してる娘もいるのよ。それも私のようなトップレスラーじゃなく、若手の愛ちゃんが。だったらなんとしてもその研究の成果を発揮させてあげたいじゃない。長谷川美幸は了解済みよ」
『でも、社長には……』
「事後承諾でいくから。明日、ジャパンレディースは次期シリーズの日程の会見を行うらしいから、それと同じ時間に、私も会場にマスコミを呼んで今のシリーズの今後の展望という名目で記者会見を行うからね。そういう訳で悪いけど、明日会場の方に朝イチで来てくれる?」
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