もどる

15R 対抗戦前夜

「あるわけ無いよ! だってまだデビューして二年目のド新人だよ!」
 タッちゃんは笑みを浮かべたまま
「でも、NJWPの選手の中でジャパンレディース勢と絡んだのは山神さんと中谷さんの二人だけッスよ」
 と言う。確かに私は中谷さんと組んで長谷川さん相手にハンディキャップ変則タッグマッチをやった。でも……。
「……でも、長谷川さんはジャパンレディース生え抜きの選手じゃなくてNJWP出身レスラーじゃない。NJWP所属時代は沙希さんとだって何度も戦ってたはずだよ。他の選手だって長谷川さんと戦ってたろうし」
「若手の頃の長谷川選手と今の長谷川選手を同じに考えたらいけないッスよ。それに、その頃の長谷川選手はあくまでNJWPのレスラー。そう考えたら“ジャパンレディースのレスラー”と戦ったのは紛れも無く山神さんと中谷さんだけッスよ。それに……」
「それに、何?」
「一つの興行での平均的な試合数は八試合から十試合程度だけど、ジャパンレディース所属選手は十人程度しかいないから、対抗戦となったら全員出てくると見ていいんスよ。その中にはキャリア的に山神さんや中谷さんと同じくらいの選手、つまりデビューしてそんなに年月たってない選手もいるんス。そういった選手の相手になるのはやっぱり山神さんと中谷さんしかいないッス!」
 なんとしても私に対抗戦に出て欲しいわけかな。そりゃ、見てるだけならなんとでも言えるよ。あ、でもタッちゃんも大事なファンの一人だから、ファンの希望には応えるのがプロの務めなのかな……。
「あの……、タッちゃん……?」
前ページ
次ページ