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14R シュートとセメント

 相手の弱点を攻めるのは勝負の鉄則。しかし中山先輩はそんな事をしなくても、最初のドロップキックですでに勝負は決まっていたはずだ。勝つためではなく、ただ痛みつけるために私の左肩を狙っている。

 でも、なんで……?

 解らない。ただはっきりしてる事は、これが普通の試合ではないという事だ。
 中谷さんと見たビデオのことが不意に頭に浮かんだ。

 ……シュート……?

 今の私には、シュートに対応できるだけの地力は無い。もしあったとしても、今の体の状態では恐らくその力は発揮出来ないだろう。
 私はリングのマットの上を転がるようにして、場外へ落ちた。リングアウト負けでいい、とにかく早く終わらせたい、と思っていた。しかし中山先輩は、私の安易な負けを許してくれなかった。中山先輩も場外へ下り、身動きできない私を強引に立たせ、リングへと押し上げてしまったのだ。そして、そこからは再び左肩への執拗な攻め。


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