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14R シュートとセメント

「キャリア的に言ったら私もまだまだ新人だからさ。あまり大きな事を言って先輩達と気まずくなったらいけないからね。誰か名乗りを上げるのを待ってるんだけど……。この様子じゃ無理そうだね。ったく、仕方ないなぁ」
 言いながら中谷さんが、リングに向かった。さすが中谷さん。がんばれー……って、あれ?
「私が相手だ」
 中谷さんとタッチの差で中山美子先輩が叫んだ。中谷さんは一瞬固まって、それからバツ悪そうな顔で私を見た。思わず苦笑いしてしまう私。
 中山先輩は黙ってリングに上がると女の人に対して手招きをした。女の人もリングに上がる。
「さあ来い」
 小さく中山先輩が言うと、女の人が身構えた。空手のような構えだ。対する中山先輩は仁王立ちのままだ。
「そんな構えでいいのか? 隙だらけで打撃が簡単に入ってしまうぞ」
 女の人が言う。打撃ということはやっぱり空手かな。
「いいから来いよ。その御自慢の打撃で私を倒す事が出来るのならな」
 笑みさえ浮かべながら中山先輩が言う。怒りの形相で女の人は鋭い踏み込みから正拳突きを繰り出した。しかし、中山先輩はそれを体を沈ませてかわすと、そのまま踏み込んできた足にタックルを決めた。女の人はなす術もなくグラウンド状態になってしまう。
「中山さんの勝ちだね。同じ空手でも水野さんのような寝技もあるような流派と違って、この人のは立ち技オンリーみたいだから。寝技になってしまったら中山さんに負けは絶対に無いよ」
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