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14R シュートとセメントその日、ちょっと寝坊してしまったため、練習開始時間に遅れて到着した私だった(それでも晶ちゃんよりはかなり早い)。「遅れて済みません!」 しかしみんな私には見向きもしない。というか、それどころではないという状況だ。 「……どうしたん……ですか……?」 言いながら道場のリング周辺を見ると、見たことも無い強面の女の人がいる事に気付いた。 「新しい練習生さんですか?」 「だったらいいんだけどねぇ」 私の問いに中谷さんが答えた。新入りさんじゃない……。じゃあなんだろう。 「俗に言う道場破りってやつよ」 「道場破り!?」 思わず素っ頓狂な声を上げてしまったが、その女の人に睨まれて口を押さえる。 道場破りなんて漫画の中だけの話だと思っていたので、もう本当に、普通に驚いてしまった。 「プロレスラーは腰抜けばかりか? 私がたった一人で来たのに誰も相手しようとしないとはな!」 その女の人が叫んだ。 言い訳ではないけど、明日からシリーズが開幕する。だから下手なことして怪我でもしたら、楽しみに待っているお客さんに悪い事をしてしまう。それさえなければ私だって名乗り上げてもいい……かな……怖いけど……。 「な・中谷さんはどうです……?」 |
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