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13R 他団体調子に乗った私は、東京ドームで見て覚えて、先日練習したばかりのスピアータックルを試合で初めて“試し斬り”した。もんどりうって倒れる長谷川さん。すかさずフォールの体勢に入るが、そこは前座レスラーに対するメインイベンターの意地、長谷川さんはレフェリーがカウントを取る前に肩を上げた。「愛ちゃん、こっちこっち!」 中谷さんが声をかけてくる。そうだ、これは変則とはいえタッグマッチなんだ。私は長谷川さんを無理矢理起こすと鳩尾に一発ヒザを打ち付け、そのまま長谷川さんを引きずるように引っ張ってコーナーに戻った。私の背中に自分からタッチして中谷さんがリングに入ってくる。 交代したのだから私は出ていないとね。 しかし、ロープの外に出ようとする私を中谷さんは止めた。 「前座ではタッグマッチなんて滅多に無いから私も初めてなんだけどね、せっかくだから二人がかりの攻撃ってやつをやってみようよ」 あ、なるほど。確かにタッグマッチ見てみるとそういうシーンはあるよね。 私は頷くと、中谷さんと二人で長谷川さんをロープに振った。しかし、跳ね返ってきた長谷川さんは、逆に私と中谷さんにダブルのラリアットをしてくる。生まれて初めてのタッグマッチで勝手が解らない私と中谷さんは、あっけなくそれを食らって二人仲良くマットに大の字。 ……ったぁ……。さすがトップを張ってるレスラーだけあって反撃も半端じゃないなぁ……。 そう思いながら立ち上がると、中谷さんもほとんど同時に立ち上がって 「ひーん、顔打っちゃった〜」 |
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