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13R 他団体

「私は準備だけは怠らない主義なワケよ。それに私の入場テーマが入ってるから」
 沙希さんは思わずプッと吹き出すと、MDを受け取る。
「はい、着替えるから出てってちょうだい」
「オッケー、でも言っておくけど、ウチの中谷と山神は手ごわいよ。いくら二対一でも負けてしまったら、美幸の望みの対抗戦だって流れてしまうから、その辺は気を引き締めておいてね」
「……有難い忠告と受け取っておくよ」
 NJWP・ジャパンレディースの両エースの間で対抗戦への同意が成された瞬間だった。


 そして試合が始まった。普通タッグマッチは、誰か一人でも一本取られたら終わりなんだけど、変則ルールとして、長谷川さんが勝つ条件に、私と中谷さん、両方から一本取る事、が付け加えられた。つまり、私と中谷さん、どちらかを倒しただけでは試合は終わらないで、残った方も倒さないといけない。逆に私と中谷さんは、どちらかが脱落しても、残った一人が長谷川さんに勝つことが出来たらこちらの勝ち、だ。単純に考えると明らかにこちらが有利だけど、そこはそれで、長谷川さんは他団体とはいえトップクラスの実力を持っているから、実際はどうとも言えない。
 私は無我夢中で長谷川さんの胸板にミドルキックを打ちつけた。手応えは確かにある。実際長谷川さんも私のキックを嫌がる素振りを見せた。
 間違いなく効いている! 他団体とはいえ私の打撃はエースクラスの選手にダメージを与えるほどの威力を持っている!
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