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13R 他団体「美幸……」「ナニよ」 私と中谷さんがリング上で手持ち無沙汰に時間を潰している時、控室では沙希さんと長谷川さんが顔も見合わせないまま何やら話をしていた。 「アポも根回しも何もしないでこんな事をした理由を教えてくれない? 返答によっては業界の大問題になってしまうわよ」 「いつまでも対抗戦が決定しないからね。一種の売名行為とでも言っておくよ。こんな大事件が起きてしまったら対抗戦をしないわけにはいかなくなるワケだし……ね。それに古巣だからやったのよ。そうでなかったらいくら私でもそこまでやれないワケ」 「……なるほどね。このことはあんたの方の社長には……?」 「何も相談もしてないよ。私の独断。その結果私がどうなっても仕方がない、私はそこまで覚悟を決めてやったワケ」 「解ったわ。ウチの社長を通じてあんたのとこの社長には言っておくから。間違っても長谷川美幸をジャパンレディースから解雇だけはさせないようにってね」 「……サンキュー……」 「どうでもいいことかも知れないけどさ、こういう事態なんて全く予想なんてしてなかったから、あなたが入場するとき音楽は無いよ。今時無音で入場なんて前座でもしないけど、そのあたりは許してよね」 「ああ、ソレ?」 長谷川さんはニヤっと笑みを浮かべると、ポケットからMDを取り出した。 |
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