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13R 他団体

「帰って下さい、困ります!」
「うるさい、ザコは引っ込んでな!!」
 この声は……まさか……。
 声のした方に目を向けると、ジャパンレディースプロレスリングの長谷川さんが私服のまま今にもリングに上がろうとしているのを、必死に止めようとしている先輩たちの姿があった。
 長谷川さんは、先輩たちを蹴散らすとリングに上がり、リングアナウンサーからマイクを引っ手繰った。
「用件は解ってるはずだ! 山吹沙希! 私と戦え!!」
 大声でアピールする長谷川さんに、観客席からは「帰れ」コールとブーイングが交錯していた。確かにここはNJWPのリングであって、お客さんもNJWPのファンだ。ジャパンレディース、つまり他所者は敵と見なされ(実際そうだけど)ブーイングの対象となってしまう。私は何が起こったのか把握できないままオロオロとしていた。ついさっき体重を暴露されて恥ずかしい思いをした事など完全に頭から飛んでいた。
 その時──。
「山吹〜!」
「やっちまえ〜!」
 入場通路付近の客席からこんな声が聞こえた。
 見てみると、沙希さんがため息をつきながらリングに向かってくる。
 沙希さんは本部席から一本マイクを手に取ると、リングに上がってきた。
「沙希、私はリングシューズも水着も持ってきてるワケ! それだけの覚悟でここに来たワケよ!!」
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