もどる

13R 他団体

 と答える社長であった……。


 しかし、団体同士で合同興行を行うという具体的な話は行われないまま、いつもと同じように新春第一弾のシリーズ巡業が開幕した。
 開幕戦の前座のトリは、いまや前座の黄金カードと呼ばれている、私と中谷さんのシングルマッチ。今ではデビュー当初の10分一本勝負ではなく、時間も30分となっていた。もっとも、時間いっぱいまで戦う事はほとんど無く、15分くらいのところで私が関節の逆を取られて負けることが多かったけど。
 私と中谷さんの入場が終わり、リングアナウンサーによる選手紹介のところで、私は思わぬ辱めを受けることになった。
『青コーナー、178センチ“78”キロ、山神──、あーいー!』
 誰が私の今の本当の体重を……。
 観客席から「お? あいつ、太ったのか?」という声が聞こえて、私はさらに真っ赤になった。赤コーナーを見ると、中谷さんが悪戯っぽい笑みを浮かべていた。……中谷さん……か……。
『赤コーナー、155センチ52キロ、中谷──、園ー子ー!』
 この前55キロと言ったくせに、それより更に少なくコールしてもらってる!! こんなのってあり!? いや、落ち着け、これはきっと一種の心理戦だ、ここで私が動揺してしまったら、そこを確実に中谷さんに付け込まれてしまう……。
 一生懸命深呼吸をしている時、リングサイドでなにやらもめている、聞き覚えのある声が聞こえた。
前ページ
次ページ