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12R バトル・ロイヤル

 中谷さんが目を閉じたままピクリとも動かない事に気付いたのは、しばらく勝利の余韻に浸った後だった。
「な・中谷さん!?」
 中谷さんは全く反応が無い。
「中谷さん!」
 私の頭の中を最悪の事態が起きたのではないかという思いが駆け巡った。いくら受身が上手い中谷さんでもジャーマンを受けるのは生まれて初めてのはずだ。受身のタイミングが合わないで打ち所が悪かったのではないだろうか……。
「大丈夫。失神してるだけだよ。これでイビキとかかき始めたら一大事なんだけどね、気絶してるだけ」
 と沙希さん。脳挫傷などの場合は昏倒したままイビキをかくと聞いた事がある。とりあえず心配は無い事が解った私はホッと胸を撫で下ろした。
「沙希さん、中谷さんは受身取ってました……?」
「もう完璧。チャンピオンの私が恥ずかしくなるほど上手く受身を取ってたよ。でももっと驚いたのは、あんなに完璧に受身を取ったのにも関わらず完全失神してしまう愛ちゃんのジャーマンの威力、ね」
「178センチの巨体なんだし、落差は凄いものがあるよ」
 社長が沙希さんの言葉に続けていった。そこに
「まだまだ改善の余地はたくさんあるんだけどね。でも相手の選手生命を考えたら改善しない方がいいかも知れないかもね」
 と森山さん。森山さんはさらに
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