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12R バトル・ロイヤル

 今だ!
 私は決められる前に中谷さんの腕から頭をスルリと抜き、そのままバックを取った。中谷さんほどの相手からバックを取るのは容易な事ではない。同じ技を連続して掛けられるとついつい同じ技で対抗してしまいたくなるレスラーの習性を逆に利用したのだ。そして一気に引っこ抜く。私は中谷さんを抱えたままブリッジした。
 ジャーマン・スープレックス・ホールド。社長とのスパーリングで一度だけやった、沙希さん直伝の私のただ一つの大技だ。レフェリーがマットを叩く。一回、二回、……三回!

「やったぁ!」
 私はブリッジを解くと、文字通りその場に飛び跳ねた。実戦でジャーマンを初披露出来た事よりも中谷さんから初めて勝利した事が何よりも嬉しかった。しかし喜びのあまり、私は中谷さんに対する気遣いを全く忘れていた。







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