もどる

12R バトル・ロイヤル

 破れかぶれになった私は足を大きく振り上げた。こうなったら前座でやってる技だけで対抗するしかない。現時点での私のフェイバリットホールド(決め技)、カカト落とし、これしかない!
 しかし、私にカカト落としをやってみるよう勧めたのは他ならぬ中谷さんだ。おまけにいきなり何の脈絡も無く出すような技を簡単に食らってくれるほど中谷さんは甘い相手ではない。私はカカト落としをかわされるだけでなく、無防備になった片足にタックルを決められ、寝技に持ち込まれてしまう。寝技なら前座でいつもやっている事ではあるけど、中谷さん相手には寝技でも圧倒的に不利だ。私は中谷さんが技に入る前にロープに逃げた。
 立ってもだめ。寝てもだめ。結局今回も私は中谷さんには勝てないのか……。
 いや、ちょっと待ってよ。……ある! 私にもたった一つだけ大技がある!

 再びリング中央で中谷さんと組み合った私は、ヘッドロックを仕掛けた。実は私はヘッドロックで他の先輩との試合に勝ったことがある。それだけに強烈に効くはずだ。しかし、それで決めようとは思っていない。
 中谷さんがヘッドロックを決められたまま私の体をロープに押し込み、ロープブレークとなる。そして仕切りなおし。ここでも私はヘッドロック。何度も何度も執拗にヘッドロックを狙う。
 何回ヘッドロックしただろう。さすがに中谷さんも少しいらつきが感じられてきたのか、逆に私に対してヘッドロックを仕掛けてきた。


前ページ
次ページ