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11R 大技

「なるほど、まだ荒削りのうちにプロの洗礼を浴びせようって事ね」
 ……見透かされてる……。
「まぁ、デビューについては後々考えるとして、そのデビュー戦の相手は愛ちゃんにやってもらうつもりだよ」
「はい。……え? わ・私!?」
 沙希さんの言葉に私は思わず素っ頓狂な声を上げた。

「……で、如月に勝てたんだから、約束どおり私とスパーリングしようか?」
 未だに驚いた顔のままの私に社長が声を掛ける。
「あ、は・はい!」
 社長が晶ちゃんと入れ替わりにリングに上がってきたので、私は気を取り直そうと両頬をパンパンと叩いた。
「社長に対しての愛ちゃんだから、さっきのハンデを愛ちゃんにも与えたらどうですか?」
 沙希さんの言葉に社長は苦笑いした。
「私が組技だけで山神がなんでもありって訳? やめてよ。今日ようやくトレーニング再開できた人間が、ずっと試合してる人間にそんなハンデ与えたらえらい事になっちゃう」
「じゃあ、両者とも同条件でって事ですか。打撃はどうします? 本来スパーリングでは打撃は無しなんですよね。だから如月が橋田の鳩尾を打ったのは本当はダメなんですよね」

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