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11R 大技

「そのへんはどうでもいいんじゃない? せっかくだから試合のルールに準じた形式でやろうよ。スパーリングに本当はレフェリーは無いんだけど、沙希がやってくれるでしょ?」
「でしょ? ……って決め付けられてもねぇ……。ま、いいですけど。ただし、愛ちゃんは前座組なんだから、派手な大技は封印してくださいよ」
「ちょ・ちょっと待ってください!」
 沙希さんが話を進めているので、当事者である私は思わず声を上げた。
「あ、ゴメン、勝手にあれこれ言って。で、なに?」
 沙希さんが聞いてくる。
「あの、私、まだ前座だから、大技とかやらないし、出来ないんですけど、受けるのはやってみたいです。社長の強さを体で知るために……」
 沙希さんは目を丸くした。
「愛ちゃん、本気で言ってるの? 私だって社長には勝てないんだよ?」
「それは休場する前の私と沙希の場合、だろ? いま沙希と戦ったら私がやられてしまうよ」
 苦笑交じりに社長がぼやいた。
「最初から勝とうとは思ってません。ただ、こんな機会、次、いつあるか解らないですから……」
 沙希さんはしばらく考えてから私を手招きした。
「社長、ちょっと愛ちゃん借りますよ」
「どうぞ」

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