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11R 大技

 私の足から抜けた晶ちゃんはその勢いのまま私に馬乗りになろうとした。が、その動きはおとりで、私が馬乗りへのディフェンスをしようとしたときには晶ちゃんは立ち上がって、力任せにがら空きになった私のお腹にストンピング(いわゆる踏み付け)をやってきた。それも、何度も。
「ぐふっ!」

「さっきまでバーリ・トゥードっぽい展開かと思ったら、いきなり純プロレスっぽい技を出してきて……。あのバカには節操ってモンがないの?」
「い〜や。そのときそのときの状況で、使える技はプロレスのルールで許されている以上なんでも使えって言ってあるから」

「人のお腹を力任せに……。もし私が赤ちゃんを産めない体になったらどうすんのよ!?」
 私はなおもストンピングしようとする晶ちゃんの足を手で掴むと、その足に自分の足を絡めて、足の力で晶ちゃんの体を強引に倒した。そしてそのまま晶ちゃんの足を絞り上げる。アキレス腱固めだ。
「勝負あったね。参ったしないと本当にアキレス腱完全断裂だよ……って、あっ!?」
 晶ちゃんも同じ技を掛け返してきた。アキレス腱固めの掛け合い、正に根気比べだ。関節技はポイントが少しでもずれると全く効果が無くなるものだが、しっかりとその辺は押さえてある。思わず私は沙希さんに向かって叫んだ。
「さ・沙希さん! 滅多やたらにやっちゃいけないと言ってたあの技、使ってもいいですか!?」

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