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11R 大技と、不意に内腿の足の付け根に激痛が走った。晶ちゃんが親指を突き立ててきたのだ。思わず晶ちゃんの胴を捕獲していた私の足から力が抜ける。その隙に晶ちゃんが私の足からスルリと抜けた。「ツボを突いて相手の力を抜くなんて……。社長、こんな事まで教えたんですか!? これはプロレスの戦い方ではなくて既に総合格闘技の世界ですよ!」 「いや、教えてないよ。あれはあいつが本能でやった事でしょ。それに仮に私が教えた事だとしても、私は非難される覚えは無いよ。プロレスは最強の格闘技なんだ。どんなルール、どんな相手であろうとレスラーは勝たないといけない」 「それって、たとえばボクシングのルールでボクサー相手にしてもレスラーは勝たないといけないって事ですか? 無茶ですよ。私だってプロボクサーどころかアマチュアにだってそっちのルールでは勝てませんよ」 「まぁ、あくまでそれを理想とした、心掛け、だけどね。でも私はサンボ(ロシアの組技系格闘技。技術体系的には柔道をベースとしているが、柔道では使われない足への関節技のバリエーションがかなりある)のルールで、ロシアの猛者に勝った事があるよ。沙希だって『今バーリ・トゥード系の総合格闘技がもてはやされてるけどプロレスこそが真の総合格闘技だ』とかって雑誌のインタビューで言ってたじゃない」 |
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