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11R 大技中を覗くと、リングの上で晶ちゃんと社長が取っ組み合っているのが見えた。いきなり社長を相手にスパーリングなんて、ある意味すごい事だ。社長の動きは力強く、森山さんのようなスマートさは無いが全く無駄が無い。 しかし、もっと驚いたのは、あの晶ちゃんの動きが全く別人のようになっている事だ。たった数時間でどうしてここまで変わるのだろう。 スパーリングが一段落したところで、社長が入り口にいた私と沙希さんに気付き、声をかけてきた。 「なにジロジロ見てるんだ? 見せもんじゃないぞ、なんてね」 私は思わず 「社長、私とスパーリング、いいですか?」 という言葉を口にしていた。 「いいけど、そうだな、こいつとスパーリングして勝てたら相手してやるよ」 社長はこう言うと晶ちゃんを指差してニヤリと笑った。 「は? 晶ちゃんに勝てたら……ですか……?」 「もちろんハンデありで。山神は組技だけ、こいつはなんでもありで」 「ちょっと社長、現場では私が最高責任者なんですよ。私の前でバーリ・トゥード(ポルトガル語でなんでもあり。基本的には目突きと噛み付き以外全て許される)なんてさせませんよ」 社長の言葉に沙希さんが噛み付いた。 「あのねぇ、私がなんでもありといったのは、プロレスのルールに置いてって事だよ。プロレスで反則になってる事はいくらなんでもさせないって。打撃だって、平手ならいいけどグーで殴るのはだめだよ」 |
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