もどる |
11R 大技デビューする前、中谷さんに初めてボディスラムされた時、全身の痛みに息が止まった事を思い出して聞き返す私。「いいよいいよ。バーンとやっちゃって」 中谷さんはそう言うが、私は躊躇していた。自分で言うのもなんだけど、私は日本女子プロレス界で一番身長があるのだ。落差から来る衝撃は中谷さんの比ではない。今ではただの痛め技にすぎないはずのボディスラムで、私は実際の試合で先輩相手にピンフォールで勝った事もあるのだ。前座の若手とはいえ立派なプロである先輩相手でもカウントスリーを奪える事もあるほどの私のボディスラム、まだデビューさえもしていない素人の晶ちゃんが受けたらどうなるか。……私は殺人はしたくない。 「あ・あの、それは中谷さんに譲ります。さっきから何度も後頭部を打って意識朦朧としてるところに私がボディスラムなんてやったら……」 「意識? ンなモン、こうすればいいのよ」 そう言うと中谷さんは晶ちゃんの頬をパンパンと何度も叩いて、遠くへ行こうとしている意識を強引に引き戻した。 「う・う〜ん……。はっ! セ・センパイ〜、もう倒すのやめてくださいよぉ〜!」 私に半ベソで訴える晶ちゃんに、中谷さんがにっこり微笑んで 「大丈夫。もう倒さないから」 と言った。 「本当に本当ですかぁ?」 |
前ページ 次ページ |