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11R 大技

 次の日から私と中谷さんによる晶ちゃんへのプロレス教室が開講(?)した。とりあえず基礎トレーニングとして、例のトランプを使ったトレーニング法を三人でやる事に。前回中谷さんとやったときは一組(52枚)だけを使ったが、今日は四組のトランプを混ぜてよく切って使った。同じマークのキング(13回)が三回連続で出たときは晶ちゃんだけでなく私や中谷さんも一瞬焦ったりしたが、コーチである手前、根を上げるわけにはいかない。全てのカードを使い切った頃には、さすがに肩で息をしていた私と中谷さんであった。ちなみに晶ちゃんは、以前一日中休み無しでスクワットしたくらいスタミナはあるはずなんだけど、いろんな種目をランダムにやったことで、それが想像以上の体への負担となったのか“死んでいた”。マーク関係無しで、とにかく出た数字の回数だけスクワットとか腕立てのみ、という風に種目を限定していたとしたら、たとえトランプを十組使ったとしてもケロッとしていただろう。
「今までのは準備運動だよ。さぁて、いよいよ本番、受身の練習だ」
 中谷さんの声を合図に、私はぶっ倒れている晶ちゃんを強引に起こした。そして、立たせたところで不意に手を放す。疲労困憊で立っているだけの力も残っていない晶ちゃんの体は、急に支えを失ったことで、後頭部からまともに倒れてしまった。私は内心「あちゃあ〜」と思いながらも、コーチという立場上、あえて冷たく
「何やってんのよ、倒れるときはちゃんと受身を取らなきゃ駄目でしょうが!」
 と言い放った。そして再び無理矢理立たせては倒す、を繰り返す。我ながら容赦無いなぁ。
「愛ちゃん、荒療治といこうよ。前に私が愛ちゃんにやったように、晶ちゃんをボディスラムやってやって」
「え? いいんですか?」
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