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11R 大技次の日、道場で沙希さんが橋田先輩に、晶ちゃんとスパーリングするように話しているのが聞こえた。「それは無理ですよ! まだ何も教えてないんですよ!?」 橋田先輩が言っているのが聞こえる。私も橋田先輩の意見には賛成だ。確かに夕べいろいろ教えたけど、口での説明だけでは教えてないのも同じだ。しかも晶ちゃんの様子ではどこまで覚えているかも怪しい。頭でも不完全で、体では完全に何も出来ない状態なのだ。こんな晶ちゃんがいきなりスパーリングしたら、わざわざ怪我をさせるようなものだ。 「いいから。もし怪我しても会社の方で適当に処理するからさ」 さ・沙希さん……。 例によって寝坊して練習に遅刻してきた晶ちゃんに、『いいのかなぁ』という顔をしながら橋田先輩がスパーリングに誘った。私はそれを見ると 「ちょっとトイレ」 と道場から出た。見てられないので逃げ出したというのが正解かも知れないけど。 ちなみにそのとき沙希さんは所用で事務所の方に行っていた。 しばらくして道場に戻ろうとしたときに、調度用事を終えた沙希さんと一緒になる。 |
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