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10R プロ私は立ち上がると、深く頭を下げた。「はい! おやすみなさい!」 「ちょっと大きな声を出さないでよ、今日はホテルじゃなくて旅館なんだから。もう寝てる選手もいるんだし」 「あ、すみません……」 その日、私のプロレスラーとしての目標が出来た。それは、トップレスラーになったら、常勝する事、だ。無敗ではなく常勝だ。無敗と言ってしまったら、負けなければいいと引き分けに逃げるかもしれないから。確かに勝ち続けるのは困難だろうし、どうしても勝てない相手が出てくることもあるだろう。でも、決して引き分けに逃げたりはしない。どんなに不利になっても、最後まで諦めずに勝ちを狙っていくんだ、と。そして、私の初勝利のときのお客さんの反応も頭に残っていた。相手に勝つだけではない、観客、そしてテレビで見ている全国のファンに対しても勝ってやる。私がリングに上がった時点で客の目を全て自分に向けさせてやるんだ、と心に誓った。 |
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