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10R プロ

 しかし、次の日の試合で私の連勝はストップしてしまった。海外遠征中の水野先輩が、水野先輩、紺野先輩に並ぶ隠れた実力者と言っていた中山先輩に不覚にもスリーパーホールドで締め落とされて屈辱の失神レフェリーストップとなってしまったのだ。私が目覚めたときには、中山先輩は勝ち名乗りを受けていた。
 悔しい!
 私は思わず両手でマットを叩いた。

 その日、私は久しぶりに沙希さんに呼ばれる。
「今日はなんで呼ばれたかわかるかな?」
「負けたからでしょうか……?」
 沙希さんはニヤリと笑うと
「ま、それはそうだけどね。なんで今日は負けたのかな?」
 と聞いてくる。
「後ろを取られたらいけないって頭では解ってたんですけど……、上手さにやられました……」
 私がうつむきながら言うと、沙希さんはパンパンと軽く拍手をした。私は全く想像してなかったリアクションに目をパチクリさせる。
「ちゃんと敗因が解るなんてえらい! 以前の愛ちゃんなら、相手が先輩で自分は後輩だから、と答えてたんだろうけどね」
 と沙希さんは嬉しそうに言う。私はまだ意味がよく解らない。
「今日の負け、愛ちゃんはどう思った?」
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