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10R プロ

めに転じてたら、今日と同じような試合になってました!」
 中谷さんのおかげで先日いい試合が出来たと思い込んでいた私は、思わず大声を上げてしまった。
 沙希さんは私の目をじっと見つめる。
「……愛ちゃんもとうとう私に口答えするようになったか……」
「あ、すみません……!」
「いいよ。ただね、これだけは言わせて。いま愛ちゃんはちょっとムッとしたでしょ。だから大声を上げた。その気迫が試合で欲しいのよ。相手に対してコンチクショウって部分がね。昨日の試合でも、そこまでの思いがあったら、わざと受ける事しかしなかった中谷ちゃんになら勝ててたかもしれないよ」


 そして次の日。合同練習の前に私が柔軟していると
「愛ちゃんって凄く体が柔らかいのね〜」
 と中谷さんが声をかけてきた。
「立ってる状態で、足、どのくらい上がる?」
 私は立ち上がると右足をヒョイと上げた。ピンと伸ばしたままのその足は頭より高く上がった。
「うわぁ、何気なくやっちゃうとこがスゴイ! じゃあ、K1なんかのカカト落としみたいなのも軽く出来ちゃうねぇ」
 中谷さんの言葉を私はそれほど深く考えずに聞いていた。

 その日の吉田先輩との試合は、相変わらず私は絶不調だった。もう負ける、と思ったとき、中谷さん
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