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10R プロ

 その日の巡業先の会場へ移動するバスの中でも私は考え続けていた。

「愛ちゃん、起きて。着いたよ」
 中谷さんの声に私はハッと目を覚ました。いつのまにか眠っていたらしい。慌てて飛び起きると、荷物を持って体育館に先輩たちを追うように会場入りした。
 控室に、その日の試合カードが張り出される。
「さて、今日の試合は誰とかな〜?」
 中谷さんが言いながら試合カードが書かれた紙を覗き込むので、私も一緒にその紙を見た。
「……えっと、第一試合、第一試合……。え? 中山先輩対田中先輩……? 私の名前が無い……」
 私の定位置である第一試合に私の名前が書かれてないのを確認した私は呆然とした。もしかして私の試合は放送するに値しないという事でカットされたんだろうか。
 が、そこに中谷さんの嬉しそうな声。
「うわぁ! 今日、愛ちゃんとだぁ!」
「え?」
 私は慌てて紙を見直した。

第四試合
中谷園子対山神愛

「だ・第四試合……」
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