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10R プロ

「心の中ではまだわだかまりがあるね。全然吹っ切れてなんかない。気がこもってない試合してたら負けて当たり前よ。それで、一度も勝ててない事を気にするなんて。しかも、私にあこがれてプロレス入り? チャンチャラ可笑しいわ」
 私は目の前が真っ暗になった。搾り出すように
「わ……私は全部の試合で気合入れて試合してるつもり……です……。確かに今日はテレビという事で緊張してた部分もあったけど……」
 と私は言った。
「今の言葉、もう一度、私の目を見て言える?」
「……」
 体がワナワナと震えているのが自分でも解った。なぜか涙が出てきて止まらない。
 沙希さんはフゥとため息をつくと
「ま、今日のところはもういいわ。明日寝坊しないでね」
 と言うと、私を残して部屋に戻った。
 私はしばらくその場に立ち尽くしていた。

「あ、愛ちゃん、いた!」
センパ〜イ、探しましたよぉ
 ホテルで同室の中谷さんと晶ちゃんが近づいてきたので、私は慌てて涙をふいた。

 晶ちゃんが寝た後で、私は中谷さんに、沙希さんに言われた事を話した。
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