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9R デビュー戦

 この試合で私は完全にお釈迦様の手の平の孫悟空の状態だった。でも、一瞬だけとはいえ中谷さんを焦らせた事が評価されたのか、数年後になって名勝負と語り継がれる事になった。もちろん、そのときの私はそんな事解るわけは無いけど。
 試合前は拒否されたけど、試合が終ってからの握手には笑顔で応じてくれた中谷さん。
「嘘じゃないよ。本気で一瞬ヤバイと思った。あれ(腕ひしぎ逆十字)をかわされるとは思わなかったもん」
 という中谷さんの言葉に私は
「もっともっと中谷さんを焦らせて、いつか必ず勝ちます!」
 と答えてしまっていた。そんな事言う気は全く無かったので、自分の発言に驚いてしまう。どうやら自分でも気付かないうちに、心までプロレスラーになっていたみたいだ。

 その日のメイン、レッスルクイーンフェスティバル公式戦で、沙希さんはいきなり負けてしまった。そしてシリーズが消化されるものの、沙希さんは盛り返す事は全く出来ないまま『チャンピオンは優勝できない』というジンクスを忠実に守る形となり、全敗最下位となってシリーズは幕を閉じた。

山神愛デビュー戦(10分一本勝負)
○中谷園子(7分45秒 羽根折腕固め)×山神愛



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