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9R デビュー戦げてポーズをとる。そして、レフェリーに私と中谷さんはリング中央に呼ばれて、細かい説明を受ける。そして両コーナーにわかれるように言われて青コーナーに戻ろうとしたときに 「お客さんがいるんだから、しょっぱい(つまらないという意味のプロレス業界用語)試合はダメだよ。それこそ私を壊すくらいのつもりでやってきてね。遠慮はいらないから。技とかアピールとか解らなくても気迫があればお客さんには通じるからね」 と中谷さんが声をかけてきた。 「は・はい!」 私が答えると中谷さんはにっこり笑って右手を差し出してくる。でも、私が握手に応じようとしたらサッと手を引くので私の右手は空振りしてしまった。そのやり取りを見た観客が少し沸いた。 そうか、既に客の目を意識した戦いというのは始まってるんだ。このやり取りを観客は中谷さんが新人をからかうことで心理的にも優位に立とうとしている、と受け取ったわけだ。どこからか 「新人〜、中谷の誘いに乗るなよ〜」 という声も聞こえる。私は両手で挟むように自分の頬をパンパンと叩いて、コーナーに戻った。 カーン! ゴングと同時に私はコーナーから飛び出したが、中谷さんは組み合うかと思いきや、いきなりカウンターでドロップキックを打ってくる。中谷さんの両足が私の顔をえぐり、私はいきなりダウンを奪われてしまう。私は痛みによるダメージよりも、出鼻をいきなりくじかれた事による精神的なダメージでパニックに |
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