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9R デビュー戦

先輩に言うのが最後ですぅ
いったぁい……。いきなりチキンウィングアームロックしなくてもいいのにぃ……
 晶ちゃんが腕をさすりながら私の部屋を出て行った。

 その日、私は中谷さんとの練習の後、何も知らない振りをして中谷さんに言われるまま道場を後にした。
 そして次の日の朝。いつものように道場に行こうと中谷さんを誘う。
「おはようございます」
「あぁ、愛ちゃん、おあよ……」
 言いながら目をこする中谷さん。今日に限った事ではない。最近、朝の練習の時の中谷さんは眠そうな顔をしているのに私は気付いていた。
「気のせいか……、眠そうですね……。夜更かししてるんですか? 私との特訓の後……」
「うん、ヒミツだけどね」
 中谷さんはせっかくのカワイイ系の顔がもったいないくらい、大きな口を開けて欠伸をした。でも、そんなことより秘密という言葉が私には引っかかっていた。
 私にも言えないような事をしている……訳なのかな……。
 そこに
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