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9R デビュー戦

 言いながら新品の水着(試合コスチューム)とリングシューズを私に差し出す沙希さん。私は放心状態のまま受け取ると……。
「ちょ・ちょっと、愛ちゃん! いきなり服を脱ぎださないでよ! 部屋に帰ってから試着してよ!」
 沙希さんの大声に私はハッと気がついた。その場で着替え始めてたのだ。私は真っ赤になって服を着なおした。
「それで、入場時のテーマミュージックなんだけど、どうする? デビューでいきなりオリジナルってのもなんだから、既存の曲ってことになるけど」
「あ、えっと、なんでもいいです」
「なんでもいいってのが一番困るのよね〜」
「スミマセン……」
 私は謝ったが、本当にテーマミュージックと言われても全くピンと来なかったのでそれ以上は何も言えなかった。
「まあいいわ。こっちで愛ちゃんのイメージで決めるから。私にもいくつか愛ちゃん用のテーマの候補があるしね」
「お願いします」

 その日の夜、私は中谷さんにお願いして自主トレに付き合ってもらうことにした。
 今の段階で私はいくつかプロレス技も教わってはいるけど、スパーリングでは使えない、実際の試合でしか使えない技もある。そういった技を改めて確認しておくためだ。
 しばらく道場で二人で汗を流した後、中谷さんは
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